ベネット骨折


- 手をついて親指を痛めた
- 突き指だと思っているが痛みが強い
- 骨に異常がないか詳しく知りたい
転倒やスポーツ中のコンタクトなどの際に、発生する親指の付け根の骨折があります。
それが、今回ご紹介するベネット骨折です。
突き指と勘違いしてしまうと、予後が悪い骨折であるため様々な影響が出てくることがあります。そのようなことを避けるためにも、親指の付け根が痛くて悩んでいる方はぜひチェックしてみてください。
【もくじ】
ベネット骨折(Bennett Fracture)とは?

1. ベネット骨折の概要
ベネット骨折とは、第1中手骨(親指の付け根)の基部の骨折であり、関節内骨折の一種です。特に、手の親指の付け根にある第1中手手根関節(CMC関節)の関節面にかかる骨折が特徴的です。親指に外力が加わることで発生しやすく、格闘技、ラグビー、バスケットボールなどのスポーツや転倒時に頻発します。
※関節内骨折は、予後が悪くなることが多いこともあり慎重に処置を進めていくことが求められます。可動域の制限や痛みが残ったりするケースもあるので、気をつけましょう。
2. 解剖学的特徴と病態生理
第1中手骨の基部は、手根骨の大菱形骨と関節を形成し、親指の広い可動域を支える重要な部位です。
この関節は、多方向に動く機能を果たします。しかし、その一方で安定性が低く、外力の影響を受けやすいため、ベネット骨折が発生しやすいのです。
3. 発生機序

ベネット骨折は、以下のようなメカニズムで発生します。
- 親指が外転または屈曲位で軸方向の強い力を受ける
- 例)ボクシングのパンチ、ラグビーのタックル時に地面に手をつく動作
- 第1中手骨基部が大菱形骨に圧迫され、関節面の骨折が発生
- 長母指外転筋の牽引により、骨片が外側に変位
- このため、整復が困難になりやすい傾向があります。
ベネット骨折の分類
ベネット骨折にはいくつかのバリエーションがあり、それぞれ特徴が異なります。
(1) 一般的なベネット骨折
- 特徴
- 第1中手骨基部の関節内骨折であり、関節の不安定性が高い。
- 関節内に三角形の骨片が残り、遠位の骨片が長母指外転筋の牽引によって橈側へ転位する。
- CMC関節の脱臼骨折の一種とされる。
- 問題点
- 骨折が関節面に及ぶため、適切な整復が行われないと関節不安定性やを引き起こす可能性があります。
(2) ローランド骨折(Rolando Fracture)
- 特徴
- 第1中手骨基部の粉砕骨折。
- 典型的には「Y字型またはT字型の骨折線」を呈する。
- ベネット骨折よりも損傷が広範囲になりやすい。
- 問題点
- 骨折片が複数に分かれるため、ベネット骨折よりも整復と固定が困難。
- 手術適応となることが多い。
(3) 単純な第1中手骨基部骨折
- 特徴
- 関節に達しない骨折(関節外骨折)。
- 通常、保存的治療(ギプス固定など)で治癒可能。
- 問題点
- 変形治癒が生じた場合、親指の機能障害を引き起こす可能性がある。
診断方法
(1) 臨床症状
- 親指の付け根の激しい痛みと腫脹
- 母指の動きに伴う鋭い痛み
- 親指を握ると痛みが増強
- CMC関節の不安定性
- 握力低下
(2) 画像診断
- X線(単純X線)
- 正面・側面・斜位像を撮影し、骨折線と転位を評価。
- ストレス撮影で不安定性を評価することもある。
- CTスキャン
- 粉砕骨折や関節面の損傷を詳細に確認するために有用。
突き指との誤診が起こらないように、慎重に精査をしていくことが大切です。親指の付け根の痛みが長く続く場合には、自己判断せずに早期に検査を受けるようにしましょう。
治療方法
(1) 保存療法
- 適応:骨片の転位がない場合、または軽度の転位のみ
- 方法:
- 徒手整復行い、骨片を適切な位置に戻す。
- ギプスまたはシーネ固定(4~6週間)。
- リハビリテーション:可動域訓練と握力回復のためのトレーニング。
(2) 手術
- 適応:
- 関節面の不安定性がある場合
- 骨片が大きく転位している場合
- 粉砕骨折(ローランド骨折)の場合
- 方法:
- 経皮的ピンニング:最も一般的な方法。
- スクリュー固定:より強固な固定が必要な場合。
- プレート固定:粉砕骨折や骨欠損がある場合に適応。
ベネット骨折の予後と合併症
- 予後
- 早期に適切な治療を行えば、機能回復は良好になります。
- しかし、関節面がずれたままだと変形性関節症のリスクが高まる。
- 主な合併症
- 関節不安定性 → 握力低下や母指の機能障害
- 変形治癒 → 母指の動きに制限が生じる
- 変形性関節症(OA) → 関節の痛みや可動域制限
- 再骨折 → 適切なリハビリ不足による骨強度低下
予防とリハビリテーション

- 予防策
- スポーツ時に親指を守るためのテーピングやグローブの着用。
- 転倒時に手をつく際の適切なフォームの習得。
- リハビリテーション
- 固定後の可動域訓練
- 握力・母指の筋力強化
- 関節可動域の維持と痛みのコントロール
ベネット骨折のまとめ
ベネット骨折は、親指の付け根の関節内骨折であり、特に関節不安定性が問題となります。適切な診断と治療を行わないと、長期的に親指の機能障害を引き起こす可能性があるため、慎重な管理が必要です。
スポーツ中に発生したケガや骨折などの処置は、はっとりはりきゅう接骨院へご相談ください。当院では、骨折の処置から機能回復までのリハビリまでを大切に考え、サポートしています。
地域医療との連携を図りながら、ベストな処置や対応ができるようにしますのでまずは一度ご相談ください。