内側上顆炎

  1. 肘の内側に痛みを感じる
  2. 握力の低下を感じている
  3. ゴルフをすると痛みを肘に感じる

肘の内側に痛みを感じた場合には、内側上顆炎と呼ばれる症状の可能性があります。運動時の痛みや握力の低下など日常生活でも感じる不調が多くなっていきます。

内側上顆炎(ゴルフ肘)とは:原因・症状・治療と予防策

内側上顆炎は、肘の内側に痛みを引き起こす疾患で、主にゴルフや投球動作など繰り返し同じ動作を行うスポーツで発生しやすいため、ゴルフ肘とも呼ばれます。ただし、ゴルフをしない人にも発症する可能性があり、日常生活や仕事での繰り返し動作が原因となる場合も少なくありません。この記事では、内側上顆炎の原因、症状、診断、治療法、予防策について詳しく解説します。

1. 内側上顆炎とは

肘の内側にある内側上顆は、前腕の屈筋群(手首や指を曲げる筋肉)の起始部となる部分です。内側上顆炎は、この部位に繰り返し負荷がかかることで、筋肉や腱の炎症や微細な損傷が起こり、痛みを引き起こす疾患です。

2. 内側上顆炎の原因

(1) 繰り返し動作による負荷

  • スポーツ活動:ゴルフ、野球、テニスなどのスポーツで、投球やスイングの動作を繰り返すことが原因となります。
  • 日常生活や仕事:パソコン作業、荷物の持ち運び、工具の使用など反復的な動作も発症のリスクになります。

(2) 筋肉の過剰使用

  • 前腕の筋力が不足している場合、筋肉や腱に過度な負荷がかかり炎症が起こりやすくなります。
  • 特に物を握ることの多いスポーツで過剰な使用へと発展していきます。

(3) 不適切なフォーム

  • スポーツや作業での姿勢や動作のフォームが悪いと、肘への負担が増加します。
  • 過剰かつ、不適切なフォームは筋肉への負荷が大きくなるため肘を痛めやすくなります。

(4) 年齢的要因

  • 40歳以上の人は、加齢による腱の柔軟性低下や筋力低下の影響を受けやすく、内側上顆炎を発症しやすくなります。(ゴルフ肘と呼ばれる理由は、好発年齢が高めだからもあります)

3. 内側上顆炎の症状

(1) 主な症状

  • 肘の内側の痛み:特に指や手首を曲げる動作で痛みが増します。
  • 握力の低下:重い物を持つ際に力が入らない。
  • 動作時の不快感:ゴルフスイングや投球、またはドアノブを回す動作で痛みを感じる。
  • 腫れや熱感:肘の内側に炎症が進行すると腫れや熱感が伴うことがあります。

(2) 症状が悪化した場合

  • 痛みが持続的になり、安静にしていても違和感を感じるようになる。
  • 神経を圧迫するケースでは、腕や手にしびれを感じることがあります。

4. 診断方法

(1) 問診

  • 症状の発症状況や、スポーツや日常生活での繰り返し動作の有無を確認します。
  • 握る動作によって、どの筋肉が影響受けているのかを確認します。
  • 肘だけでなく、肩からも影響受けている可能性もあるので可動域の確認をします。

(2) 身体診察

  • 肘の内側を押して痛みがあるかをチェックします。
  • 指や手首を曲げる動作をさせて、痛みが誘発されるかどうかを確認します。

(3) 画像診断

  • 超音波検査MRI:腱や筋肉の損傷を詳細に評価。

基本的には、画像診断は不要です。レントゲン検査では、骨にしか異常が発見できません。内側上顆炎の大きな特徴は、筋肉の炎症によるものです。そのため、画像診断が可能なのは、MRIとなってきます。

5. 治療法

(1) 保存療法

ほとんどの内側上顆炎は保存療法で改善が期待できます。

  • 安静:炎症を抑えるために肘を使う動作を控えます。
  • 装具の使用:肘の負担を軽減するためにサポーターやストラップを活用します。
  • ストレッチとエクササイズ
    • 前腕屈筋ストレッチ:肘を伸ばした状態で手首を反らす動作を行う。
    • グリップ強化運動:軽い握力トレーニングで筋力を強化。
  • 専門的なリハビリテーションで、筋力強化や柔軟性向上を図ります。
  • 超音波療法や低周波治療などの物理療法も症状の軽減に有効です。

(4) 手術

保存療法で改善しない場合には、腱の修復や炎症部の除去手術が検討されることがあります。ただし、手術が必要となるケースは稀です。

6. 内側上顆炎の予防法

(1) 正しいフォームの習得

  • スポーツや作業時の動作を見直し、肘に無理な負担がかからないフォームを意識します。
  • 必要に応じて専門家から指導を受ける。

(2) 適切なウォームアップとクールダウン

  • 運動前には必ずウォームアップを行い、筋肉や腱を温めます。
  • 運動後はストレッチで筋肉の柔軟性を保ち、疲労を軽減します。

(3) 適度な筋力トレーニング

  • 前腕や上腕の筋力を強化することで、肘の負担を軽減します。
  • 例:ダンベルやゴムバンドを使用したリストカール運動。

(4) 適切な休息を取る

  • 同じ動作を繰り返し行う場合、定期的に休憩を入れることで腱の疲労を防ぎます。

(5) 適切な道具の選択

  • スポーツでは、自分に合ったクラブやラケットを選ぶことが重要です。
  • 仕事道具の場合は、持ちやすい形状や重さのものを選びます。

7. まとめ

内側上顆炎は、肘に過度な負荷がかかることで引き起こされる疾患ですが、早期の対応と適切なセルフケアで多くの場合改善が期待できます。特に繰り返し動作を伴う仕事やスポーツを行う方は、症状を放置せず早めに専門医に相談することが重要です。また、予防策を日常生活に取り入れることで、内側上顆炎の発症リスクを大幅に減らすことができます。